鉄(Fe)

酸素は、赤血球の中のヘモグロビンと結合する事によって全身へと運ばれています。ここで重要となっている成分が鉄です。また、この鉄は生体のエネルギー代謝に必要な金属でもあります。血液中の鉄、血清鉄とも言いますが、複雑なバランス機構によって制御されていて、一番多い異常は鉄の体外喪失による血清鉄低値になります。

若い女性を中心として鉄欠乏の有する人はとても多く、その結果鉄欠乏性貧血を起こす事があるのです。一方で、高齢者での鉄欠乏では消化管からの出血による場合があり、精査の過程で悪い病気が見つかるという事もあります。成長期や妊娠時は鉄需要が増える為、明らかな病気がなくとも血清鉄が低値なっているという事があります。

血清鉄を調べるという事によって、身体の鉄欠乏あるいは鉄過剰を推測する事が可能です。つまり、鉄代謝異常の診断に役立てられます。また、総鉄結合能・不飽和鉄結合能の測定により、その原因に関する情報も得られます。血中には鉄を運んでくれるトランスフェリンというタンパクが存在しています。

総鉄結合能は、このトランスフェリンと結合する鉄の量と考えて、よく「総鉄結合能=鉄+不飽和鉄結合能」となります。鉄と総鉄結合能の比率を飽和指数と言い、鉄欠乏性貧血の場合には低値に、鉄過剰症などでは高値になります。